tonari

そばにいるあなたへ

パニック発作のひとに、そばでできること

かける言葉と、言わずにおく言葉。そして、すぐそばで一緒にできる、ゆっくりの呼吸をひとつ。

こんな思い、ありませんか。

そばで見守っているあなたなら、どれか覚えがあるかもしれません。

  • こわがっているのが分かるのに、頭が真っ白になって、言葉が出てこない。
  • 「落ち着いて」とくり返してしまい、かえって苦しめている気がする。
  • 早くどうにかしてあげたいのに、何もできなくて、自分が情けない。
  • 正直に言うと、自分も少しこわくて、それを隠している。
  • 波が過ぎたあと、次に何をすればいいのか、いつも分からない。

どうにかして直す必要はありません。あなたが落ち着いて、そばにいてくれること。それだけで、もういちばん大切なことができています。ひとつだけ、心にとめておいてください。相手の動悸がはじめてのものだったり、胸の痛みや、本当に息ができない感じをともなうときは、からだの病気の可能性もあるものとして、医師に診てもらってください。パニックと心臓の問題は、よく似て感じられることがあるからです。

かわりに、こうして

息を止めない、ひと呼吸。

つらさが強くなったら、そこでやめてください。いま危険を感じている、あるいは自分を傷つけたいと思っているときは、お住まいの地域の緊急番号や、地域の相談窓口にご連絡ください。Tonari は、治すものではなく、そばに寄り添うものです。

今、まさにその場にいますか。

大切なひとが、パニック発作のさなかにいます。心臓は激しく打ち、呼吸は速く浅くなり、手が震えているかもしれません。「現実感がない」「何かがおかしい」と口にするかもしれません。そしてあなたは、力になりたい一心で、頭がうまく働かなくなっている。

まず、やさしい事実をひとつ。完璧な言葉なんて、持っていなくていいのです。パニックのときにいちばん助けになるのは、気の利いたことを言う人ではありません。そばに居つづけ、落ち着いていて、こわさを増やさない人です。

からだの中で起きていること(かんたんに)

パニック発作は、誤作動する警報のようなものです。まわりに危険は何もないのに、からだの警報装置が本当の危険が来たかのように鳴り、アドレナリンが一気にあふれ出します。だからこんなにも生々しく、こんなにも本物に感じられるのです。激しい動悸、締めつけられる胸、何かがひどくおかしいという感覚。

本人には終わりがないように感じられますが、アドレナリンの高まりそのものは長くは続きません。パニックは登りつめ、頂点をこえ、たいていは数分のうちに、自然とおさまっていきます。あなたの役目は、それを止めることではありません。波が過ぎていくあいだ、落ち着いた、安心できる場所でいることです。

「落ち着いて」が逆効果になるわけ

「落ち着いて」と言われると、本人には、自分の恐怖がまちがっている、あたりまえのことができていない、そんなふうに聞こえてしまいます。パニックはただでさえ、自分をコントロールできていないと本人に告げています。そこへ「落ち着け」と求められると、恐怖の上に、恥ずかしさが重なるだけです。

かわりに届くのは、名づけることと、ゆるすことです。たとえば、「これはパニックだね。すごくつらいよね。でも、ちゃんと過ぎていくよ」「あなたは安全だよ。私はここにいるからね」。説明を求めたり、会話を続けさせたりしなくて大丈夫です。声は低く、ゆっくりと。あなたの落ち着きは、こわさと同じように、そっと相手に移っていきます。

その瞬間に、本当に助けになること

まずは、言葉から。触れる前には、ひと言たずねてください。パニックのさなかでは、触れられることが、閉じこめられるように感じられることもあるからです。「背中に手を当てても、いいかな」といったふうに。大きな問いかけではなく、短くて答えやすい選択肢を。近くにいて、相手と同じ目線までからだを低くして、沈黙があってもそのままで大丈夫です。

それから、相手が受け入れられそうなら、呼吸を指示するのではなく、一緒に呼吸することを、そっと差し出してみましょう。いちばん助けになるのは、吐く息を長くすることです。鼻からそっと吸って、口からゆっくり、やわらかく吐く。吸うときより、少しだけ長く。相手がリズムをつかめるように、となりで一緒に。ゆっくり吐く息が、からだを落ち着かせるブレーキ(副交感神経)をそっと押してくれて、吐く息にあわせて、心臓も静まっていきます。

息は、止めません。息を止めさせたり、紙袋に向かって呼吸させたりは、けっしてしないでください。パニックのとき、息を止めて空気が足りなくなると、「うまく吸えない」という感覚が、かえってずっと強くなってしまいます。ここに、止めるところはありません。ただ、長く、楽に吐く息を、くり返すだけ。とがった感じが、少しずつやわらいでいくまで。

高ぶりではなく、固まってしまうとき

パニックは、いつも高ぶって、速くなるとはかぎりません。ときには、じっと動かなくなり、遠くにいるよう、感覚が鈍く、頭が真っ白になって、心がその場から離れてしまうことがあります。これは、エンジンが回りすぎている状態というより、動きを止めてしまった状態に近く、そんなときは、呼吸法が最初の一歩ではありません。

そんなときは、まず五感に戻ります。足の裏が床に触れている感じにそっと気づいてもらう、部屋の中で見えるものをいくつか挙げてもらう、ひんやりしたものを手に持ってもらう。少しずつ「今ここ」に戻ってきたら、次に、ゆっくりの呼吸を一緒に。呼吸を強いることは、けっしてしないで、相手のペースに合わせてください。

治すものではなく、そばに寄り添うもの

だれかのとなりで一緒に呼吸することは、それ自体がやさしさです。そして、ゆっくり吐く息には、確かで、よく知られた、からだを落ち着かせるはたらきがあります。けれどそれは、その瞬間にそばに寄り添うものであって、治療ではありません。パニック障害を治すものでも、次の発作を防ぐものでもありませんし、カウンセリングや薬のかわりになるものでもありません。

もしパニック発作が、その人の暮らしの中でくり返すようになっているなら、波が過ぎたあとで、いちばんやさしくできることは、けっして急かさず、そっと、医師やカウンセラーに相談することをすすめることです。CBT(認知行動療法という、実践的で筋道立った心理療法)のような対話のカウンセリングは、多くの人の助けになりますし、動悸の裏にからだの病気がないか、医師に確かめてもらうこともできます。このページは、緊急時のためのものではありません。息ができない、胸が痛い、あるいは相手の安全がこわいと感じるときは、お住まいの地域の緊急番号や相談窓口にご連絡ください。

そばで

つぎに、どこへ。

質問

みなさんがよく尋ねること。

パニック発作のひとに、何と声をかければいいですか。

短く、あたたかく、落ち着いて。たとえば、「これはパニックだね。すごくつらいよね。でも、ちゃんと過ぎていくよ」「あなたは安全だよ。私はここにいる。どこにも行かないからね」。「落ち着いて」と言ったり、たくさん質問したりするのは、できれば避けてください。今起きていることに名前をつけて、ただ波に乗って過ぎるのを待っていい、とゆるすこと。それは、恐怖を言葉で説きふせようとするより、ずっと大きな助けになります。

息を止めさせたり、紙袋を使わせたりしたほうがいいですか。

いいえ。どちらも古くからの言い伝えで、パニックをかえって強めることがあります。息を止めたり、紙袋の中の空気を吸い直したりすると、「うまく息が吸えない」というこわい感覚が、強まりやすいのです。かわりに、一緒に呼吸して、吐く息を長く、ゆっくりと。そっと吸って、口から少し長めに、やわらかく吐く。息は止めません。ゆっくり吐くその息こそが、からだを静めてくれます。

パニック発作は、どのくらい続きますか。

激しい高まりは、たいてい数分のうちに頂点をこえ、そこからやわらいでいきます。渦中にいる本人には、もっとずっと長く感じられますが。あとには、震えのなごりや、どっと出る疲れが、しばらく残ることもあります。無理に止める必要はありません。過ぎていくあいだ、落ち着いて、そばにいること。それが、いちばんの助けです。

医師に診てもらったほうがよいのは、どんなときですか。

もしそれがはじめての発作だったり、動悸がこれまでにないものだったり、こわいと感じるとき、あるいは胸の痛みや、本当に息ができないほどの苦しさがあるときは、いちど医師に診てもらってください。パニックと、本当のからだの病気は、よく似て感じられることがあり、その見わけは医師にできるからです。パニック発作がくり返し起きるようなら、そっと、医師やカウンセラーに相談することをすすめてあげてください。呼吸は、その瞬間にそばに寄り添うものであって、警報を鳴らしつづける原因そのものを治すものではありません。

一緒に呼吸しても、うまくいかないときは。

それで大丈夫ですし、あなたが失敗したわけでもありません。相手が呼吸についてこられなかったり、高ぶるというより、固まって、感覚が鈍く、遠くにいるように見えるときは、五感を通したグラウンディングに切りかえてください。足の裏を床につける、ひんやりしたものを手に持つ、見えるものをいくつか挙げてもらう。近くにいて、あなた自身の呼吸をゆっくり保ちながら、波が過ぎるのを待ちます。もし、相手のことが本当にこわく感じられるときは、お住まいの地域の緊急番号や相談窓口にご連絡ください。

いつも、そばに。

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