tonari

あなたのこと、かもしれません

現実に感じなくても、精神病ではありません。

その、現実でない、夢のような、ガラス越しのような感じには、名前があり、理由があり、五感を通して戻る道があります。

こんな感じ、ありませんか。

今、どれかが頭をよぎっているなら、それはあなただけではありません。

  • 世界が平らで、夢のようで、ガラス越しに眺めているみたいだ。
  • 自分の手も声も、どこか自分のものでない気がする。
  • このまま、頭がおかしくなってしまうのではと、こわい。
  • すべてが遠く、くぐもって、現実の音量を下げられたみたいだ。
  • 現実に感じているか確かめるほど、よけいに現実でなくなる。

この状態はこわいものですが、張りつめた自律神経が示す、よく知られたありふれた反応であって、精神病のしるしでも、ずっと続くものでもありません。もし、動悸や胸の高鳴り、胸の痛み、息苦しさが、初めてだったり、こわく感じたりするときは、まず医師にみてもらい、からだに原因がないか確かめる価値があります。初めての症状は、いつでも、きちんと調べる価値があるからです。

まず五感、それから呼吸

冷たいコップ、床につけた足、名前を言える五つのもの。それから、もし呼吸が安心なら、息を止めないひとつを。

つらさが強くなるようなら、いったんやめてください。いま危険を感じている、あるいは自分を傷つけたいと思っているときは、お住まいの地域の緊急番号か、地域の相談窓口にご連絡ください。Tonari は、治すものではなく、そばに寄り添うものです。

これは、あなたのことですか。

からだは、ちゃんとここにあります。部屋を見わたせるし、聞かれれば答えられるし、道も歩けます。それなのに、すべてが現実でないように感じる。まるで自分を映した映画のように、あるいは世界が作りもののセットで、自分はガラスの一枚うしろにいるように。これが「現実感の消失」、世界が現実に感じられなくなる状態です。多くの場合、「離人感」、自分自身が現実でないように感じる状態と、隣り合わせでやってきます。ここでは、まとめて離人感と呼びます。

まず知ってほしいのは、多くの人がこわくて聞けずにいることです。これは精神病ではありませんし、あなたが二度と正気に戻れなくなる、ということでもありません。あなたは、これが現実でないように「感じる」と分かっています。その「分かっている」という部分こそ、精神病では失われるものであり、あなたにはまだ、ちゃんとそれがあります。

何が起きているのか(やさしい説明)

離人感は、あなたを守るために、自律神経が世界の音量をそっと下げている状態です。ストレスや恐れ、疲れ、パニックが、あるところを越えると、脳は、すべての鮮やかさや生々しさを絞ることがあります。配線が焼き切れないように、ブレーカーが落ちるのに、少し似ています。

ですから、これは高ぶりすぎではなく、いわば「閉じる」ほうの反応です。動悸を起こすのと同じストレス反応の、いちばん端に位置しています。ただしここでは、からだが張りつめた状態から、感覚のうすい、霧がかった、遠いような状態へと切り替わっています。とても不快ですが、その裏で、からだは何か守るはたらきをしています。その瞬間には、どれほど役に立たないように思えても。

これは、薄れていきます。自律神経が、このギアのまま止まってしまうことはありません。おおもとのストレスが静まるにつれて、霧は薄れ、世界に色と奥行きが戻ってきます。たいていは、あなたが何かを無理にがんばらなくても。

なぜ、ループするのか

ここに、落とし穴があります。この感じがあまりに奇妙なので、こわくなる。そしてその恐れが、そもそも世界を薄暗くした当のしくみに、新しいストレスを送り返してしまいます。気づけば、自分を見張っています。もう現実に感じるだろうか。薄れてきただろうか。けれど確かめるたびに、その非現実さに光を当て、よけいに大きくしてしまうのです。

見張ることが、ループを生かし続けます。抜け道は、考えたり確かめたりして現実感に戻ろうとすることでは、まずありません。頭の外にある、ありふれた何かを、五感にそっと預けること。すると、注意の向かう先が、霧そのもの以外にできるのです。

その瞬間に、五感を通して戻る

離人感は、高ぶりすぎではなく「閉じる」ほうの状態なので、呼吸よりも先に、五感で「今ここ」に戻るグラウンディングから始めます。目的は、落ち着くことではなく、つながりなおすことです。手ざわりのしっかりしたものに手をのばして、そこへ注意を押しあててみましょう。冷たいコップを握る。ざらついた壁を手のひらでなでる。両足を平らにつけて、床が自分の重さを受けとめるのを感じる。

いま実際にここにあるものに、声に出して、あるいは心の中で、名前をつけていきます。見えるものを五つ、聞こえるものを四つ、触れられるものを三つ。色を言う。時刻を言う。こうして脳に、自分が今どこにいて、いつなのかという、はっきりした確かな手がかりを渡します。それこそ、霧のかかった感じが、そっと疑っているものなのです。

もし霧の上に、鼓動が速く、パニックのような、高ぶった感じが重なっているなら、ゆっくり長く吐く息が、その部分の角をそっととってくれます。鼻から、そっと息を吸い、それから、吸うときより長く、ゆっくり吐きます。途中で息を止めることは、一度もありません。大きく吸おうと力まないでください。そして、これで非現実感が消える、とは思わないでください。ゆっくりした呼吸がやわらげるのは高ぶりのほうで、「閉じた」状態そのものを持ち上げるわけではないからです。それは、五感と、時間の仕事です。

呼吸でできること、その先にある助け

グラウンディングと、ゆっくり吐く息は、つらい瞬間に寄り添ってくれるものです。治すものではなく、治療でもありません。ひとつの波を、少し耐えやすくしてくれて、これは過ぎていくのだと信じる助けになります。それがやがて、この感じを養っている恐れを、ゆるめていきます。

もし離人感が、たびたび起きたり、長く続いたり、つらい出来事のあとに現れたり、あなたを自分の人生から引きはがしているなら、それは専門家の力を借りるしるしです。不安やパニック、トラウマにくわしい医師やカウンセラーが、その奥にあるものを一緒に見てくれます。これには、確かで効く手立てがあります。だれかに頼ることは、大げさなことではありません。それは、理にかなった次の一歩です。あなたには、自分の毎日を、もう一度その場で生きて感じる資格があります。

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質問

みなさんが、よく聞くこと。

離人感は、自分がおかしくなる、精神病になるということですか。

いいえ。離人感と精神病は、別のものです。精神病では、自分の体験が現実でないという感覚そのものを、その人は失います。離人感では、あなたはそれが現実でないように「感じる」と分かっています。その気づきこそ、精神病では欠けているものです。これはストレスと不安の反応であって、あなたの正気が失われていくしるしではありません。

この感じは、いつか消えますか。それとも、このままなのでしょうか。

消えていきます。離人感は、張りつめた自律神経の、一時的な状態であって、脳がずっとそうなってしまう病気ではありません。奥にあるストレスがやわらぐにつれて、霧は晴れ、世界に奥行きと色が戻ります。行っては戻ることはあっても、その中に永遠に閉じこめられることは、ありません。

呼吸法で、離人感は治りますか。

それだけでは、治りません。離人感は、高ぶりすぎというより「閉じる」ほうに近く、ゆっくりした呼吸がおもに助けになるのは、高ぶり、つまりそわそわして鼓動が速くなる側のストレスです。ですから、まず五感で「今ここ」に戻るグラウンディングが先です。ゆっくり長く吐く、息を止めない呼吸は、霧に重なるパニックをそっとやわらげますが、それは寄り添うものであって、治すものではありません。これが続くようなら、専門家の助けの代わりにはなりません。

その瞬間に、いちばん早く現実感を取り戻す方法は。

五感に、はっきりとつかめるものを渡してあげてください。冷たいものや、手ざわりのあるものを握り、足を床に押しつけ、いま見えるもの、聞こえるものを五つ、できれば声に出して、名前をつけます。こうすると、注意が頭の中から引き出され、脳に、自分が今どこにいるのかという、はっきりした証拠が渡ります。たいていは、考えて現実感に戻ろうとするより、こちらのほうが助けになります。

どんなときに、医師にみてもらえばよいですか。

たびたび起きたり、長く続いたり、つらい出来事のあとに現れたり、暮らしのさまたげになっているなら、医師にみてもらってください。医師やカウンセラーが、その奥にあるものを一緒に見てくれます。また、動悸や胸の痛み、息苦しさが、初めてだったり、こわく感じたりするときは、からだのほうも調べてもらってください。パニックが心臓発作を起こすことはありませんが、初めてのからだの症状は、きちんと調べて原因を確かめる価値があるからです。

いつも、そばに。

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